慢性疲労症候群の外来診療| 実績症例

慢性疲労症候群の専門医クリニックハイジーアから実績症例

慢性疲労 改善例1

 

初診時

29歳 男性

主訴

慢性疲労

慢性疲労の症状

神経症状

不眠

その他の症状

一見とても健康そうに見えるため、体がつらいことを会社の周りの人たちに理解してもらえない。
症状がこれ以上悪化したら会社を辞めなくてはならなくなる、と不安に思い、当クリニックを受診した。

既往歴

24歳、けがによる顎、頬、小指の骨折。

治療歴

心療内科で「うつ病」と診断され、抗精神薬や睡眠薬などを処方されたが、自分は「うつ」ではないと考え、自己判断で薬の服用はしなかった。
その後6年間、様々な漢方薬を服用し、多少の効果は感じたが、すっきりと完治にいたらなかった。

血液データ

基準値 初診時 3ヶ月後 6ヶ月後 9ヶ月後
ヘモグロビン 13.5~17.5 17.4 15.6 15.7 15.6
ヘマトクリット 男性 39.7~52.4 !53.3 46.7 48.6 47.4
総蛋白 6.7~8.3 !8.5 8.1 7.6 7.6
GOT 10~40 21 17 15 18
GPT 5~45 19 20 20 15
γ-GTP 80以下 25 19 13 14
尿素窒素(UN) 8.0~20.0 8.0 16.1 16.0 13.9
尿酸(UA) 3.8~7.0 !7.4 6.5 !7.2 6.0
血糖(グルコース) 70~109 76 84 87 94
グリコアルブミン 12.3~16.5 !11.5 !11.5 12.7 !11.9
フェリチン 18.6~261 101 148 107 148

ドクターによるデータ解説

まずヘマトクリット・総蛋白が基準値を超えて高いことから、かなりの「血液濃縮(血液ドロドロ)」状態であると考えられました。長期間にわたりタン白質の摂取量が不足すると、血漿中のアルブミンが減少し、血液中の水分量が減少するため、血液濃縮状態になります。循環血漿量が減少しているため、実際には貧血と同じ状態になり、慢性疲労や倦怠感、立ちくらみ、めまい、冷え性、むくみなどの症状の原因となります。慢性疲労を主訴に当院に来院する患者さまの半分弱は、このようなデータを示しています。
実際、初診時の尿素窒素(腎機能障害がない場合、タン白質の摂取量を反映する)は8と低値であり、タン白質の摂取量が不足しています(尿素窒素が10以下では強いタン白質欠乏と考えます)。
また、血糖値の平均を表すグリコアルブミンが低値であり、機能性低血糖症が疑われました。
他にも、脂肪肝、鉄欠乏などがあると考えられました。

治療方針

血液データより、タン白質・ビタミンB群・鉄等の栄養不足があると診断しため、栄養療法を開始。

栄養処方

プロテイン 10g×3回 (朝・昼・晩)
ビタミンC 1g×5回 適宜
ビタミンB群(B5レベルで) 500mg×3回 (朝・昼・晩)
16mg×3回
(ヘム鉄として、2400mg)
(朝・昼・晩)
ビタミンE 400mg×3回 (朝・昼・晩)
カルシウム/マグネシウム 600mg/540mg×3回 (朝・昼・晩)

また、機能性低血糖症が強く疑われたため、5時間糖負荷試験を行い、インスリン過剰分泌を伴う反応性低血糖症と診断した。低糖質・少量頻回の食事指導を行った。
症状から、遅延型食物アレルギーや腸内環境の悪化なども疑われたため、それらの検査も行った。
遅延型食物アレルギー検査では、卵や酵母(イースト)など50種類以上の食材にアレルギー反応がみられため、除去食・ローテーション食事法の指導を行った。
腸内環境アンバランス検査では、腸内のカンジダ菌の増殖と、腸粘膜の炎症の存在を確認した。腸粘膜の炎症のため、腸管侵漏症候群(Leaky Gut Syndrome:LGS)を起こしており、その結果重篤な食物アレルギーを引き起こしていると考えられた。これに対し、カンジダの除菌を含む腸の治療を行った。
(腸の治療処方) ジフルカン(抗真菌剤)・シプロキサン(抗菌剤)、善玉菌サプリメントなど。

経過

治療3ヶ月後
劇的に症状が良くなった。
体のしんどさや疲労感はなくなり、痛みや腹満感などの自覚症状も劇的に改善し、驚いている。
精神面でも、些細なことはまだ気になるが、すぐ忘れられるようになった。
以前よりも眠れるようになったが、まだ緊張感は残っている。
食後の症状(首の痛みなど)も改善した。

ドクターのコメント

矢崎智子

この患者さまは、初診時では仕事に行くのが困難なほどの強い疲労感を訴えて、非常にお困りのご様子でした。
種々の検査で多くの問題が発覚し、それに基づいて治療を行ったところ、治療3ヶ月で、気になる症状のほとんどが、初診時の症状の強さを10とすると、0~3まで激減しています。

慢性疲労(慢性疲労症候群)は、がんや糖尿病など生活習慣病とはちがい、生命にかかわる一大事とはいえないものの、患者さまのQOLを低下させる厄介な病気です。
しかし、一般の医療機関で検査をしても、その原因を見つけることはほとんどできません。
これは、現代西洋医学が器質的な疾患(車の故障に例えると、エンジントラブル)の治療を得意とする学問のため、そして保険診療の範囲では血液検査の項目が制約されているために、機能性疾患(車の故障に例えると、ガソリン不足)の代表選手である慢性疲労の原因を診断するまでに至らないためなのです。

そして、残念ながら、原因が一般の医療機関では見つけられないために、心療内科にまわされ、「うつ病」などと診断され、抗うつ剤などの薬を処方されるケースがほとんどです。当然、原因を治療しているわけではないので、それで症状がよくなればラッキーですが、薬の副作用でかえって症状が悪化することも少なくありません。

慢性疲労のしんどい、だるいなどの体の不調には、必ず原因があります。原因なくして症状は起こりません。
慢性疲労の原因は、要因の数の少ない単純な方から、多数の要因が複雑に絡み合った方まで、患者さまによってさまざまです。

現在のところ考えられる慢性疲労(慢性疲労症候群)の原因には、肝障害など器質的疾患を除けば、以下のものがあります。

私が経験したケースでは、1の栄養失調と3の機能性低血糖症の合併が多く見られますが、重症な方ではこれに4のホルモン失調が絡んでいることが多いです。

残念ながら、これらの原因のほとんどは、日本の一般的な医師には理解されておらず、検査も保険で認められていないものがほとんどです。そのため、病院に行っても慢性疲労の原因を見つけることができないのです。

この患者さまのケースは、1、3に加え、5の食物アレルギーと6のLGS、9の感染(カンジダ菌)などの多様な要因が絡み合った、複雑な例といえるでしょう。
しかし患者さまが当院の治療方針をよく理解してくださり、適切な検査と治療を行うことができたため、短期間で改善に至った症例です。

慢性疲労 改善例2

 

初診時

43歳 女性

主訴

慢性疲労、パニック発作

慢性疲労の症状

精神症状

その他の症状

日常生活を普通にこなせるようになりたいと希望され、当クリニックを受診した。

既往歴

20代のころ、甲状腺機能低下症と診断された。
5年前に、高脂血症と診断され、コレステロール降下剤を服用していたが、副作用が怖くなり、またコレステロール値は260までは問題ないことを聞いて、自己判断で中止した。
アレルギー性鼻炎、脂漏性皮膚炎

治療歴

心療内科にて「パニック障害」と診断され、抗精神薬や睡眠薬などを処方された。自己判断で、パニック発作の症状が出たときのみ、薬を服用している。

血液データ

基準値 初診時 3ヶ月後 6ヶ月後 9ヶ月後
ヘモグロビン 11.5〜15.0 13.6 13.2 13.9 14.4
総蛋白 6.7〜8.3 7.6 7.1 7.7 7.8
GOT 10〜40 18 15 27 18
GOT 5〜45 15 16 30 17
γ-GTP 30以下 !48 20 19 15
尿素窒素(UN) 8.0〜23 12.4 12.5 12.6 17
血糖(グルコース) 70~109 84 113(食後) 82 80
グリコアルブミン 12.3〜16.5 !13 12.9 !12 12.9
亜鉛 64〜111 89 75 !120 102
フェリチン 4.0〜64.2 !61 !119 !156 !124

ドクターによるデータ解説

尿素窒素の低値から、タン白質の摂取量の不足と、γ-GTPの高値から、脂肪肝の存在が考えられました。貯蔵鉄を表すフェリチン値はそれほど低く見えませんが、脂肪肝があると高めのデータになるため(マスキング)、実際の鉄欠乏の程度はもっと強いことが予測されました。
グリコアルブミンも低く、機能性低血糖症が疑われました。

治療方針

血液データから、タン白質・ビタミンB群・鉄等の栄養不足が認められたため、栄養療法を開始。

栄養処方

アミノ酸 9g×3回 (朝・昼・晩)
ビタミンC 1g×3回 (朝・昼・晩)
ビタミンB群(B5レベルで) 75mg×3回 (朝・昼・晩)
16mg×3回
(ヘム鉄として、2400mg)
(朝・昼・晩)
ビタミンE 100 IU×3回 (朝・昼・晩)
マルチミネラル 1カプセル×3回 (朝・昼・晩)

機能性低血糖症が疑われたが、患者さまが希望されなかったため、5時間糖負荷検査は施行しなかった。しかし低血糖症はあるとみなして、低炭水化物・少量頻回食の指導を行った。
また、遅延型食物アレルギーで、ほとんどの食物に強度の反応を認め、重度の食物アレルギーがあることが発覚した。ローテーション食事法を指導するとともに、腸内環境に問題があることが強く疑われたため、腸内環境アンバランス検査を行った。
腸内環境アンバランス検査では、善玉菌の不足と悪玉菌の存在を認め、腸管免疫の低下があることを確認した。
腸の治療処方として、善玉菌などのサプリメントを処方した。

経過

治療3ヶ月後
治療前と比較すれば、慢性疲労症状はよくなっているが、まだ疲れる。自覚症状の程度は、治療前を10とすると、10→5まで改善した。

治療6ヶ月後
ほとんどの症状はなくなった。

治療9ヶ月後
調子は良いが、まだ疲労感の訴えがあったため、副腎疲労を疑い、DHEA-S測定と唾液コルチゾール検査を行った。軽度ではあるがDHEA-Sとコルチゾールの分泌低下を認めた。DHEAの摂取と、ビタミンCの大量摂取、および高濃度ビタミンC点滴療法を施行した。それにより劇的に疲労感は改善した。

主治医のコメント

矢崎智子

この患者さまは、強い疲労感と、時々「電池が切れたような」脱力感を訴えていらっしゃいました。
治療後、症状は改善してはいますが、完全に良くなった!と自覚できるまでには、1年の時間がかかりました。
この患者さまの特徴は、遅延型食物アレルギーの結果が驚くほど重度であったことでした。
一般的に遅延型食物アレルギーというと、じんましんや喘息発作などの症状を思い浮かべますが、それはIgE抗体による「即時型」アレルギーと呼ばれるものです。日本で一般的に認識されているのはこの即時型アレルギーです。
即時型アレルギーは、アレルゲンを摂取するとすぐに症状が表れ、通常激しい症状であることが多いですから、患者さまも自覚しやすいですし、国内でも保険で検査が可能なので診断しやすいといえます。
それに対して、IgG抗体によって起こる「遅延型」食物アレルギーは、日本ではまだほとんどの医師に理解されていません。また、アレルゲン食物を摂取してもすぐには症状が起こらず、ある程度の時間がたってから症状が出ること、一見アレルギーに関係なさそうな症状が多いため、食物が原因であることに気がつきにくいのが特徴です。
残念ながら現在のところ日本国内では検査ができませんので、当院ではアメリカの検査会社に送って検査を行っています。
遅延型食物アレルギーが引き起こす症状は実に多彩であり、胃腸症状、疼痛、精神症状(うつや不安、幻覚など)、皮膚症状、免疫力の低下、慢性疲労、頭痛、月経困難症など、多岐に渡ります。
遅延型食物アレルギーの原因は腸管侵漏症候群(LGS)ですので、腸内環境アンバランス検査(これもアメリカに送って行う検査です)を行い、それに基づいた治療を行うことが必要です。

慢性疲労の原因は実に複雑である、ということを考えさせられた興味深い症例でした。

慢性疲労症候群 改善例3

 

初診時

17歳 男性

主訴

慢性疲労

慢性疲労の症状

このような状態が続いたらサッカーも大学受験もできないのではないか、と心配したご両親と一緒に、当クリニックを受診した。

既往歴

筋膜炎で高熱を出し、1週間入院し抗生剤の投与を受けた。
アレルギー性鼻炎。

治療歴

内科で膠原病を疑われ検査をしたが、異常なし。
大学病院を紹介され、心エコー、腹部エコー検査などの検査をしたが、すべて異常なし。
神経内科と耳鼻科でも、異常なし。
市民病院の思春期外来で、うつ病と診断され、投薬治療が始まった。
1ヶ月間、抗うつ剤などの薬を飲んだが、まったく改善しないため、睡眠障害専門外来を紹介された。
睡眠専門クリニックを受診し、睡眠時無呼吸症候群と診断され、CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸療法)と睡眠薬による治療を開始。睡眠の状態は多少よくなったが、疲労の症状は改善しなかった。
最後に、近所の内科にて、慢性疲労症候群と診断された。

血液データ

基準値 初診時 3ヶ月後 6ヶ月後
ヘモグロビン 13.5~17.5 15.7 15.6 15.3
ヘマトクリット 男性
39.7~52.4
49.4 48.5 49.5
総蛋白 6.7~8.3 !8.4 7.8 8.1
GOT 10~40 36 23 20
GPT 5~45 !71 23 21
γ-GTP 80以下 33 15 14
尿素窒素(UN) 8.0~23 11.7 18.4 17.1
尿酸 3.8~7.0 !7.2 5.7 6.4
血糖(グルコース) 70~109 80 77 80
遊離脂肪酸 0.10~0.90 !1.31 !1.00 0.46
グリコアルブミン 12.3~16.5 !10.5 !10.8 !11.1
中性脂肪 30~149 102 39 48
インスリン 1.7~10.4 !11.3 3.8 5.9
フェリチン 18.6〜261 120 135 130

ドクターによるデータ解説

症例1と同じように、ヘモグロビンや総蛋白の上昇から、血液濃縮(血液ドロドロ状態)があると考えられました。長期間にわたりタン白質の摂取量が不足すると、血漿中のアルブミンが減少し、血液中の水分量が減少するため、血液濃縮状態になります。循環血漿量が減少しているため、実際には貧血と同じ状態になり、慢性疲労や倦怠感、立ちくらみ、めまい、冷え性、むくみなどの症状の原因となります。慢性疲労を主訴に当院に来院する患者さまの半分弱は、このようなデータを示しています。
実際、初診時の尿素窒素(腎機能障害がない場合、タン白質の摂取量を反映する)は11.7と低値であり、タン白質の摂取量が不足しています。
また、血糖値の平均を表すグリコアルブミンが非常に低値で、空腹時インスリンが高値であることから、重度の機能性低血糖症が疑われました。
他にも、基準値内ではありますがγ-GTPが高めであること(通常は20以下)から脂肪肝が、フェリチンはやや低め程度ですが、脂肪肝があると高めの数値になるため、実際には鉄欠乏があると考えられました。

治療方針

血液データから、タン白質・ビタミンB群・鉄等の栄養不足が認められたため、栄養療法を開始。

栄養処方

プロテイン 20g×3回 (朝・昼・晩)
ビタミンC 1g×3回 (朝・昼・晩)
ビタミンB群(B1レベルで) 75mg×3回 (朝・昼・晩)
24mg×3回
(ヘム鉄として、3,600mg)
(朝・昼・晩)
亜鉛 30mg×2回 (朝・晩)
クロミウム 1000μg×2回 (朝・晩)

また、グリコアルブミン値が10.5であったが、11を下回ることはめったにないため、重度の機能性低血糖症が疑われた。
BMIが31.8と高く、明らかな肥満であったが、インスリンの過剰分泌により糖から脂肪への変換が促進され、低血糖と中性脂肪の上昇、そして肥満を招いたと考えられる。
そしてそれが慢性疲労の重要な原因のひとつになっていると考えられた。
この場合、炭水化物は玄米などの未精製のものであっても血糖値を急激に上げ、インスリンを過剰分泌させる可能性が高いため、基本的に甘いものやご飯・パン・めん類などの主食を抜き、タン白質や野菜などのおかずを中心とした糖質制限食を指導した。
血糖調節異常を改善させるため、亜鉛・クロミウムを含めたサプリメントを処方した。

経過

治療前 3ヶ月後 6ヶ月後
体重 88.6kg 79.7kg 74.4kg
BMI 31.8 28.6 26
筋肉量 57.1kg 54.8kg 54.9kg
体脂肪量 28.3kg 21.8kg 16.4kg
体脂肪率 31.9% 27.3% 22.0%

治療3ヶ月後
元気が出てきたので、年初より通学ができずにいたが、4月から学校へ行けるようになった。まだ、動きすぎると疲れが出る。
低血糖症の食事療法が守れなかったとき、朝が起きられなくなり、学校に行けなくなることがわかった。
これが食事療法をきちんと行うモチベーションとなった。

治療6ヶ月後
体調が、とても改善している。体のつらさは、10→5になった。
睡眠障害は、まだCPAPを使っているが、9割がた良くなった。
自分で、朝起きられるようになった。何かをやる気力が出てきた。
まだ、運動すると疲れる。

主治医のコメント

矢崎智子

この患者さまは、疲労という症状とともに、肥満の状態であり、機能性低血糖症が病態の主要な原因を占めていると考えられました。
機能性低血糖症では、人体にとって重要なエネルギー源である血糖が低くなりすぎる、または不安定になることにより、さまざまな症状が起きる病態であり、慢性疲労の原因のひとつとして代表的なものです。
診断には5時間糖負荷検査が必要ですが、初診時のデータで血糖調節異常が明らかであったこと、また検査により症状をより悪化させてしまう可能性があるため、この患者さまの場合は行いませんでした。
この方は家族に糖尿病の方がいらっしゃいましたが、機能性低血糖症は糖尿病の家系に多く発症します。血糖調節がうまくいかないという意味では糖尿病も低血糖症も同じ範疇に入る病気であり、低血糖症を放置するとゆくゆくはすい臓が疲弊し、インスリンが枯渇して、Ⅱ型糖尿病に移行する可能性が高いのです。
この若さでこれほど血糖調節異常が強いということは、将来糖尿病に移行する可能性が非常に高いため、そういう意味でも今のうちから低血糖症を改善していかなければなりません。

糖尿病という病気は誰もが知っている病気ですが、機能性低血糖症は日本ではまだほとんど医師に知られていません。教科書にも載っていません。
そのため、その症状だけをみて他の疾患と誤診され、抗うつ剤などの投薬が行われることが多いのですが、原因の根本を治療しているわけではないので、多くの場合は改善効果がみられません。
どんな症状でも、真の原因を知ることが、治療の第一歩だと改めて理解できる症例です。

また、日本ではあまり聞きなれない「クロミウム(クロム)」という栄養素が処方されていますが、このクロミウムは、インスリンと結びついて血糖値を調節する働きを持っています。クロミウムがなければインスリンは活性化しないので、ブドウ糖を筋肉や肝臓に取り込むことはできません。クロミウムはインスリンの働きを正常化して、糖質の代謝を改善し、低血糖症の症状を改善します。とくに過食の症状がある方には必要です。
脂質代謝にも深くかかわっており、血中の中性脂肪やコレステロール値を正常に維持する作用があります。そのため、動脈硬化、高血圧などの生活習慣病を防ぐ効果があります。
米国で行われた研究によると、クロミウムを毎日摂取したところ、脂肪と体重が減少したといった報告もあり、ダイエットミネラルとして、アメリカでは広く使用されています。

慢性疲労症候群 改善例4

 

初診時

24歳 女性

主訴

慢性疲労

慢性疲労の症状

その他の症状

あまりに毎日がつらいために、会社を休職した。なんとか普通に元気になりたいと希望して、当クリニックを受診した。

既往歴

特になし

治療歴

近所の心療内科を受診し、安定剤などを処方されたが、1回服用しただけで、自己判断で薬の服用を止めた。

血液データ

基準値 初診時 3ヶ月後 6ヶ月後
ヘモグロビン 11.5~15.0 12.3 12.8 13.3
MCV 85~102 !82 88 !84
総蛋白 6.7~8.3 7.7 7.5 7.9
GOT 10~40 18 22 20
GPT 5~45 12 18 16
γ-GTP 女性30以下 11 14 13
尿素窒素 8.0~20.0 18.2 14.3 16.3
血糖(グルコース) 70~109 80 81 74
グリコアルブミン 12.3~16.5 13.8 13.4 12.5
血清鉄 40~180 !37 58 101
フェリチン 4.0~64.2 6.0 38.3 29.2

ドクターによるデータ解説

まず、初診時ヘモグロビンが12.3であり、通常貧血とは指摘されない範囲ではありますが、女性では13以上が理想ですので、貧血の傾向があります。タン白質不足がある場合、血液濃縮のため見かけ上赤血球数やヘモグロビンなどの数値は高めにでるため、一見貧血に見えないことがよくあります。しかしMCV(赤血球の大きさ)の低値、血清鉄の低値、そしてフェリチンが6.0しかない(有経女性の理想は100)ことからも、明らかな鉄欠があり、それにより貧血が起きていることが推測できます。
治療により、ヘモグロビン値は大きく変わりませんが、血清鉄とフェリチン値は有意に改善しています。
グリコアルブミンがやや低めであることから、低血糖症が疑われます。
総コレステロール値が低めでしたが、治療によって理想的な数値に改善しています。

治療方針

血液データから、タン白質・ビタミンB群・鉄等の栄養不足が認められたため、栄養療法を開始。

栄養処方

アミノ酸 9 g×2回 (朝・晩)
ビタミンC 1g×5回 (適宜)
ビタミンB群(B1レベルで) 75 mg×3回 (朝・昼・晩)
24mg×3回
(ヘム鉄として3,600㎎)
(朝・昼・晩)
ビタミンE 100IU × 2回 (朝・晩)
亜鉛 30㎎ × 2回 (朝・晩)
マグネシウム 175mg × 3回 (朝・昼・晩)

経過

治療3ヶ月後
まだ疲れやすい時もあるが、体調が良くなり動けるようになった。頭痛や立ちくらみがなくなった。母親は、本人の表情がイキイキしてきたと感じている。

治療6ヶ月後
朝起きて、疲れを感じなくなってきた。体のしんどさは、初診時を10とすると、0~3まで改善した。無理をすると、まだ疲れて頭痛や微熱を起こす。持久力がなく、体調に波があるが、友達と外出したり、楽しいことも普通に楽しくできるようになった。
もっと元気になりたいので、治療を続けようと思っている。

主治医のコメント

矢崎智子

女性の慢性疲労の症状、だるい、しんどい、疲れやすいなどの原因のほとんどに、鉄欠乏が深く関係しています。
この患者さまの場合もそうですが、やせ型でなかなか太れないという方、とくに女性の場合、鉄欠乏性貧血、または潜在性鉄欠乏が原因になっていることは多いものです。そもそも消化吸収になんらかの問題があり、鉄の吸収が不十分であること、女性の場合、月経血で失われることがその理由です。
鉄は赤血球に含まれるヘモグロビンの材料となり、全身に酸素を運ぶというのがもっとも大きな働きであり、貧血では酸素が不足するため、疲労が起こります。しかし、貧血になる前の潜在性鉄欠乏の段階でも、鉄そのものがエネルギー産生に関わっているため、疲労の症状が起こります。

この患者さまの初診時のヘモグロビン値は12.3 g/dl でしたので、一般的な医療機関では全く貧血を疑いません。しかしタン白質不足による血液濃縮(血液ドロドロ状態)があると、データ上高めの数値になるため貧血と診断されないことも多いのです。
女性の場合、血液濃縮がない状態で、ヘモグロビンは少なくとも13以上は必要です。

そして、一般の医療機関では行われませんが、フェリチン(貯蔵鉄)の数値は女性にとってとても大切です。フェリチンの女性の理想値は100ng/mlですが、この患者さまは6.0 ng/ml しかありません(注:「参考基準値」は、「理想値」ではありません)。
このフェリチン値が40以下になりますと、潜在性鉄欠乏性状態です。
残念ながら、多くの日本の医療現場では、フェリチン値まで調べることがありませんから、見逃されてしまいます。
ヘモグロビンが基準値内でも、フェリチン値が低値では、疲労や貧血のような症状がおきます。
貧血というと、一般的には「めまい、立ちくらみ」などと考えますが、貧血の症状は多様です。

貧血の多彩な症状
疲れやすく常にだるい(慢性疲労症状)、頭痛、肩こり、冷え性などの不定愁訴。月経痛、イライラなどの精神症状、PMS(月経前症候群)、原因不明の不妊症など

上記の症状がある場合では、まずは潜在性鉄欠乏を疑ってみてください。

特に結婚前の女性では、この潜在性鉄欠乏性が、不妊を引き起こす原因になりうることを是非知ってください。
アメリカの不妊治療現場では、フェリチン値が40以下は不妊の原因になるとも言われていますから、医学的な観点から説明すると、少なくとも40以上になるまでは妊娠しにくいと考えます。

詳しくは、こちら→

慢性疲労症候群 改善例5

 

初診時

48歳 女性

主訴

慢性疲労

慢性疲労の症状

体がだるく、毎日がとてもつらい。他院で、慢性疲労症候群と診断された。

その他の症状

いろんな病院で検査をしたが、どこでも異常が見つからないので、不安に思い、当クリニックを受診した。

既往歴

28歳頃、アレルギー性鼻炎(花粉症)
32歳頃、乳腺炎
46歳頃、子宮筋腫

治療歴

近所の内科、大学病院などを受診したが、異常ないと診断され、心療内科を紹介され、「うつ」と診断された。抗精神薬や睡眠薬などを処方されたが、便秘とうつ症状などの副作用があったため、自己判断で薬の服用を止めた。

改善データ

基準値 初診時 3ヶ月後 6ヶ月後
ヘモグロビン 11.5~15.0 !10.4 13.8 13.9
ヘマトクリット 女性
34.8~45.0
!33.1 42.0 41.9
MCV 85~102 !78 92 95
MCH 28.0~34.0 !24.6 30.1 31.4
MCHC 30.2~35.1 31.4 32.9 33.2
GOT 10〜40 15 21 22
GPT 5〜45 9 12 17
γーGTP 30以下 1313 13 11
UN(尿素窒素) 8.0~20.0 16.6 !20.5 14.4
血清鉄 40~180 !25 79 107
フェリチン 4.0~64.2 4.3 17.4 43.8

ドクターによるデータ解説

まずヘモグロビン・ヘマトクリット・MCV・MCHの低値から、貧血であることが明らかでした。血清鉄も低値であり、フェリチン値は有経女性の理想は100ですが、4.3と、貯蔵鉄がほとんどないに等しい状態でした。
疲労の原因として、重度の鉄欠乏と、それが進行した鉄欠乏性貧血があることは想像に難くありません。
GOT・GPTの低値、とくにGPTが低いことから、ビタミンB6の不足が考えられました。GOT・GPTは肝臓酵素ですが、補酵素としてビタミンB6が関係しており、B6不足でこれらの酵素活性が低下します。ビタミンB群は「エネルギービタミン」と呼ばれ、エネルギー産生には必要不可欠です。疲労の原因としてB群不足も非常に多く見られます。

治療方針

まず血液データから、タン白質・ビタミンB群・鉄等の栄養不足が認められたため、栄養療法を開始。

栄養処方

プロテイン 10g×2回 (朝・晩)
アミノ酸 4.5g×2回 (朝・晩)
ビタミンC 1g×3回 (朝・昼・晩)
ビタミンB群(B5レベルで) 50mg×3回 (朝・昼・晩)
24mg以上×3回
(ヘム鉄として、3,600㎎)
(朝・昼・晩)
ビタミンA 10,000 IU×1回 (晩)

経過

治療3ヶ月後
体調は、劇的に改善した。良く眠れるようになった。体がポカポカと温まってきた。月経痛は変化なし。

治療6ヶ月後
体調に波はあるが、調子が基本的に毎日良いのを実感している。会社のストレスなどがあると、眠れない日がある。月経痛が、ほとんど良くなった。無理をすると疲れを感じるので、まだまだ完全ではない。

主治医のコメント

矢崎智子

この患者さまの場合、慢性疲労症候群の原因の主な原因は、「鉄欠乏」およびそれに伴う「鉄欠乏性貧血」でした。
血清鉄、ヘモグロビン、ヘマトクリット、MCV、MCHなどが参考基準値を下回っており、明らかな貧血でした。
女性の場合、元気で疲れ知らずで、快適に毎日を過ごすには、ヘモグロビンは少なくとも13以上は必要です。(血液濃縮などのマスキングのない状態で)
また、一般の病院ではあまり行われませんが、フェリチン(貯蔵鉄)の数値は女性にとってとても大切です。フェリチンの女性の理想値は100 ng/mlですが、この患者さまでは4.3 ng/dlしかありません(注:「参考基準値」は、「理想値」ではありません)。
貧血が起きているということは、すでに貯蔵鉄(鉄の貯金)は使い果たして、赤血球そのものに異常をきたしている状態です。
女性の場合、慢性的に貧血であると自覚症状があまりない場合もありますが、鉄の不足はコラーゲン合成に支障をきたしますので老化や種々の疾患にかかりやすくなるため、放置すべきではありません。もちろん、この患者さまのように、強い貧血のために体力が低下し、ほとんど毎日寝たきりで、普通の生活ができないでいる方もとても多いです。
この患者さまは慢性疲労の症状などがありながら、仕事には通われており、「気力」「精神力」だけで、頑張っていらっしゃるような印象でした。

また、女性の若さ・美しさも、「鉄欠乏」と関係します。
お肌のくすみ・たるみ・しわなどの老化現象は、鉄欠乏状態と関係しています。
なぜなら、鉄はコラーゲン合成に必須の栄養素だからです。
一般的に「コラーゲンは美肌効果がある」と言われていますが、コラーゲンを口から摂取しても、コラーゲンはそのまま吸収されません。腸でいったん分解され、「アミノ酸」の形で吸収されます。
その分解されたアミノ酸から、体内でコラーゲンを再合成する必要がありますが、その時に必要なのが、鉄とビタミンCなのです。
そして、皮膚の合成そのものにも鉄が必要です。
そのため、貧血や鉄欠乏のある女性では、シミ・しわ・たるみなどのお肌の老化は早くなります。
女性にとっては、この「鉄欠乏」が、理想の健康だけでなく美容(若さや美しさ)にも深く関係していることを知ってください。

では、なぜ女性は貧血や鉄欠乏に陥りやすいのでしょうか?

1日あたりの失われる鉄量

バランスのとれた食事から摂取する鉄の量
(10~15㎎)
十二指腸からの鉄吸収率(約10%)
+1~1.5mg
汗・尿・大便などから排泄される量 -約1㎎
差し引き(男性、閉経後の女性) ±0
1回の月経で失われる鉄量(約20~30㎎) -平均1㎎
差し引き(有経女性) -約1㎎

上記のように、有経女性では1回の月経で約30ミリリットルの血液が失われますので、よほど徹底した食事管理でも行わない限り、健康な女性でも貧血は起こしやすいと考えます。

そして、この患者さまのように、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症などによる月経過多がある場合は、80ミリリットル以上の出血がありますから、貯蔵鉄だけでなくヘモグロビンや血清鉄の値までも「からっぽ」になるのは当然なのです。
女性の方は普段から、鉄欠乏にならないように注意をすることが必要です。

慢性疲労 改善例6

 

初診時

34歳 女性

主訴

慢性疲労

慢性疲労の症状

体がだるく、いつも疲れているため、1日中横になっている。家事や子育てが、まったくできない。

その他の症状

いくつかの病院で検査をしたが、どこでも異常が見つからないので、不安に思い、当クリニックを受診した。

既往歴

28歳頃、蓄膿症で、抗生剤を服用した。
30歳頃、橋本病(経過観察中のみで、未治療)

治療歴

近所の内科や大学病院などを受診したが、異常ないと診断された。
心療内科を紹介され、「うつ」と診断された。パキシル(抗うつ剤)、ドグマチール(抗精神薬)など、4種類の薬を処方されたが、薬は飲みたくないので飲んでいない。
3年前より、1週間に1回のペースで針治療を受けている。針治療後2~3日は調子良いが、すぐに元に戻ってしまう。
また、近所の漢方薬局で漢方薬をもらい、煎じて飲んでいるが、あまり症状は変わらない。

改善データ

基準値 初診時 3ヶ月後 7ヶ月後 10ヶ月後
ヘモグロビン 11.5~15.0 14.0 13.7 14.4 11.9
ヘマトクリット 女性
34.8~45.0
43.0 43.3 45.0 38.0
総蛋白 6.7~8.3 7.7 8.4 8.6 6.9
GOT 10~40 20 36 35 28
GPT 5~45 16 42 35 30
γ-GTP 30以下 20 !34 !37 !34
コリンエステラーゼ 女性
200~452
415 349 366 283
尿素窒素 8~23 !9.3 !14.2 15.0 19.3
グルコース 70~109 79 81 80 84
グリコアルブミン 12.3~16.5 16.0 15.9 15.2 15.6
フェリチン 4.0~64.2 32.1 53.9 56.7 32.8

ドクターによるデータ解説

まず初診時のヘモグロビンが14と高めであり、タン白質摂取量の目安となる尿素窒素が9と低値であったことから、かなりの血液濃縮状態があることが予想されました(女性のヘモグロビン値は、多少の個人差はあるものの、貧血も血液濃縮もなければ13前後が多い)。改善例1および2で解説したように、血液濃縮状態は循環血漿量の減少によって起きているため、データ上貧血がないように見えても実際には貧血と同じ状態になり、疲労や立ちくらみ・めまい、冷え性などのさまざまな症状の原因となります。
また、尿素窒素よりもγ-GTPが高めであることより、脂肪肝の傾向(隠れ脂肪肝)があることも予測されました。これはおそらくタン白質不足によるものですが、隠れ脂肪肝があるとフェリチン値はデータ上高めの数値になるため、フェリチンは32.1よりももっと低値であることが考えられ、鉄欠乏の程度も強いと考えられました。
そのほかにもビタミンB群不足、データ上は明らかではありませんが、症状から機能性低血糖症が疑われました。

治療方針

血液データから、タン白質・ビタミンB群・鉄等の栄養不足があると診断しため、栄養療法を開始。

栄養処方

プロテイン 10g×2回 (朝・晩)
アミノ酸 4.5g×2回 (朝・晩)
ビタミンC 1g×3回 (朝・昼・晩)
ビタミンB群(B5レベルで) 75mg×3回 (朝・昼・晩)
24mg以上×3回
(ヘム鉄として、3,600㎎)
(朝・昼・晩)
ビタミンE 100IU × 3回 (朝・昼・晩)
亜鉛 30㎎ × 2回 (朝・晩)
カルシウム/マグネシウム 145/72.5㎎×3回 (朝・昼・晩)

また、機能性低血糖症が強く疑われたため、5時間糖負荷試験を行い、無反応性に近い反応性低血糖症と診断した。低GI・少量頻回の食事指導を行った。
症状から、遅延型食物アレルギーの影響も疑われたため、検査も行ったところ、それほど強くはないもののほとんどの食品に遅延型アレルギー反応が見られた。この結果に基づいて、除去食・ローテーション食事法の指導を行った。
疲労の症状が強いことから副腎疲労を疑い、唾液コルチゾール検査を行ったが、明らかな問題は見られなかった。

経過

治療3ヶ月後
体調は、変わらない。

治療6ヶ月後
体調に、変化なし。

治療15ヶ月後
体調が良くなってきた。体が軽くなったのを実感している。気分もとても良い。
子供の世話を、自分だけでできるようになった。

治療19ヶ月後
ほぼ100%元気になった。

ドクターのコメント

矢崎智子

栄養療法を開始し、波はあるものの、血液濃縮が徐々に改善しています。最初に14あったヘモグロビンがが、1年後には11.9に低下していることがこれを示しています。これは貧血になってしまったわけではなく(出血等の症状はもちろんありません)、そもそも血液濃縮の原因であるタン白質欠乏を改善していったことで、循環血漿量が増え、濃縮が改善したために本来の数値が明らかになったのです。そもそも貧血の傾向があったのに、血液濃縮のために数値がマスキングされていたことがわかります。そして血液濃縮の改善とほぼ平行して症状が改善しています。
また、脂肪肝の傾向もあり、1年たってもγ-GTPが高めであることから、まだ完全には改善していません。しかしコリンエステラーゼが徐々に低下していることは、脂肪肝が改善していることを表します。飲酒をしない方のγ-GTP高値の原因の多くは、蛋白欠乏による脂肪肝です。一般的に、脂肪肝は肥満の中高年男性に多いというイメージがありますが、実はこのようなデータの変化は、痩せすぎで栄養失調の若い女性に頻繁に起こります。とくに拒食症の患者さまで顕著です。
フェリチン値があまり改善していないように見えますが、これも脂肪肝があるとマスキングで高めになるため、本来はほとんどゼロに近い状態だったと推測できます。
このように、血液データはさまざまな要因によって大きな影響を受けるため、体内環境をそのまま反映しているとは限りません。むしろ額面どおり受け止められないことが多く、患者様の体格、食事内容、症状などから複合的に読み解いていく必要があるのです。
そういう意味では、この患者さまの経過は興味深いものだったといえます。
また、興味深かったのは、この患者さまは治療経過において5時間糖負荷試験を3回受けられたのですが、そのたびに血糖曲線が改善していったことでした。
栄養欠乏の改善とともに、血糖調節も改善し、症状の改善につながったものと考えられます。

慢性疲労 改善例7

 

初診時

38歳 女性

主訴

慢性疲労

慢性疲労の症状

体がだるく、毎朝起きることができない。疲れやすい。頭がグルグル回るような感じがする。

その他の症状

いろんな病院で検査をしたが、どこでも異常が見つからなかった。
妊娠を希望しているため、赤ちゃんを授かるためにも自分自身が元気になる必要があると考え、副作用のない体に優しい根本治療を希望し、当クリニックを受診した。

既往歴

なし

治療歴

15年前、卵巣のう腫(チョコレートのう腫)を腹腔鏡手術した。卵管狭窄。

改善データ

基準値 初診時 3ヶ月後
ヘモグロビン 女性
11.5~15.0
13.8 13.7
総蛋白 6.7〜8.3 7.8 8
GOT 10〜40 14 17
GPT 5〜45 11 15
総ビリルビン 0.2~1.2 !1.3 0.9
直接ビリルビン 0.0~0.2 0.1 0.2
間接ビリルビン 0.2~1.0 !1.2 0.7
γーGTP 30以下 25 22
UN(尿素窒素) 8.0〜23 11.2 12.9
グリコアルブミン 12.3〜16.5 14.6 14.3
血清鉄 女性
40~180
!247 135
UIBC 女性
150~385
!62 !137
フェリチン 4.0〜64.2 47.2 61.4

ドクターによるデータ解説

尿素窒素の低値からタン白質不足、フェリチン低値より潜在性鉄欠乏、GOT・GPTの低値からビタミンB群不足、尿素窒素<γ-GTPから脂肪肝が考えられ、複合的な栄養失調であると考えられました。
疲労をはじめ、この方の症状の多くの部分が栄養失調であることが考えられます。
また、一般的には理解されていませんが、栄養状態は生殖能力に影響する大きな因子の一つです。体のさまざまな代謝機能がそうであるように、生殖機能をつかさどっているホルモンや神経伝達物質、サイトカインなどの免疫物質も、すべて栄養が元になって作られているのです。当院にいらっしゃる、不妊治療を一生懸命しているのになかなか妊娠しない、という患者さまの多くが栄養失調状態です。
もちろん、妊娠した暁にも、赤ちゃんの体を作るのはお母さんからの栄養だけです。栄養状態がよくないことは妊娠しづらい環境を作るだけでなく、そこで育つ赤ちゃんにとっても不利な環境である、と言えるでしょう。
妊娠成立にはさまざまな要因が関わっていますので、必ずしも栄養状態を改善するだけで妊娠に至るとは言えませんが、他にどんな原因があろうとも、まず体の土台となる栄養状態を改善することが必要だというのが私の考えです。
また、不妊の患者さまで割と特徴的なデータの変化が、間接ビリルビンおよび血清鉄の高値です。間接ビリルビンは血管内溶血(赤血球が壊れやすい状態)を意味しますが、よくある原因は、「活性酸素ダメージ(=サビ)」です。赤血球の細胞膜がサビることにより、赤血球が壊れやすくなるわけです。このようなデータは、全員ではありませんが、不妊の患者様の多くで見られます。詳しくは後述します。

不妊治療の成功例の詳細は、こちらをクリック→

治療方針

血液データから、タン白質・ビタミンB群・鉄等の栄養不足が認められたため、栄養療法を開始。

栄養処方

プロテイン 10g×2回 (朝・晩)
アミノ酸 4.5g×3回 (朝・昼・晩)
ビタミンC 0.6 g×3回 (朝・昼・晩)
ビタミンB群(B5レベルで) 75 mg×3回 (朝・昼・晩)
16mg×3回
(ヘム鉄として、2,400㎎)
(朝・昼・晩)
ビタミンE 200 IU × 3回 (朝・昼・晩)
亜鉛 15 ㎎ × 3回 (朝・昼・晩)
カルシウム/マグネシウム 72.5/36.25 ㎎×3回 (朝・昼・晩)

経過

治療2週間後
まだ治療が始まって間もないが、体調がとても良く、びっくりしている。疲れにくくなった。めまいなどの、いろんな症状もほとんどなくなった。

治療3ヶ月後
全ての症状で、自覚症状が10→0~2に激減した。しかし、頑張り過ぎるとやはり疲れる。自分の体の感覚で、妊娠しやすい体内環境になっているような実感がある。
その直後、体外受精を行い妊娠したので、栄養療法の効果だと感謝している。

主治医のコメント

矢崎智子

この患者さまは、栄養療法により短期間で劇的に症状が改善されました。栄養療法だけで改善するということは、症状の原因が単純に栄養失調であったということの証拠と言えます。もちろん他の要素が関係している場合も多いので、全員がこのように栄養療法だけで改善されるとは限りません。
不妊の患者さまで割と特徴的なデータの変化が、間接ビリルビンおよび血清鉄の高値です。間接ビリルビン・血清鉄の高値は、間接的に酸化ストレスが高いことを表していますが、この酸化ストレスが、卵巣機能に大きな影響を及ぼすのです。卵子の細胞膜がサビてしまうと、細胞膜の表面に存在するホルモンのレセプター(ホルモンの受け取り窓口)の働きが悪くなり、脳からのホルモンの命令を受け取りにくくなります。それにより、月経不順や不妊などの症状が起こると考えられています。
よく「卵子の老化」と言いますが、これは女性の年齢が高齢になるというだけでなく、このような酸化ストレスによるものも大きいのです。これを改善するために、栄養療法を行う際には必ず抗酸化物質を用います。
この患者さまでは、治療三ヵ月後に間接ビリルビン・血清鉄・UIBCが劇的に改善し、溶血が改善している(=細胞膜が丈夫になり若返っている)ことがわかります。
フェリチン値が治療後に61.4と改善していることから、逆算すると初診時では30以下と推測できます。フェリチン30以下では、体外受精などを施した場合、着床しづらかったであろうと推測できます。
この患者さまは、卵管狭窄があったため、自然妊娠は難しく高度生殖医療の適応でしたが、治療3ヶ月後では、最初の体外受精で妊娠に至っています。
体調も改善し、不妊治療も成功し、非常に喜ばれた例でした。

不妊治療の成功例の詳細は、こちらをクリック→

慢性疲労症候群 改善例8

 

初診時

19歳 女性

主訴

慢性疲労

慢性疲労の症状
他の専門医にて、慢性疲労症候群と診断された。
強い疲労感で、日常生活を普通に送ることができない。常に微熱があり、体が重だるい。
気分も、落ち込む。睡眠薬がないと眠れない。
慢性疲労専門の病院にて治療を受けているが、薬の種類が増える一方で、症状が改善するどころかさらに悪化している。
知人から当院を紹介され、「藁をもすがる思い」で母親に連れられて、当クリニックを受診した。

既往歴

なし

治療歴

慢性疲労症候群の専門病院にて、投薬治療中。

改善データ

基準値 初診時 4ヶ月後
ヘモグロビン 女性
11.5~15.0
12.1 13.9
ヘマトクリット 女性
34.8~45.0
37.7 44.6
総蛋白 6.7〜8.3 7.4 7.6
A/G 1.1〜2.0 1.2 1.9
GOT 10〜40 13 19
GPT 5〜45 8 13
CPK 40〜150 57 85
γーGTP 30以下 10 11
UN(尿素窒素) 8.0〜23 11.4 15.7
血清鉄 女性
40-180
53 146
UIBC 女性
150~385
209 !124
グルコース 70~109 74 77
遊離脂肪酸 0.10~0.90 !0.95 0.61
グリコアルブミン 12.3~16.5 12.6 !11.7
フェリチン 4.0〜64.2 32.2 72.2

ドクターによるデータ解説

尿素窒素の低値からタン白質不足、フェリチン低値より潜在性鉄欠乏、GOT・GPTの低値からビタミンB群不足などが考えられ、複合的な栄養失調であると考えられました。
グルコース・グリコアルブミンも低値であり、機能性低血糖症が疑われ、5時間糖負荷試験を行ったところ、反応性低血糖症と診断しました。
まず症状の根本的な原因として、栄養失調と低血糖症を改善することが必要であると考えられました。

治療方針

血液データから、タン白質・ビタミンB群・鉄等の栄養不足が認められたため、栄養療法を開始。

栄養処方

プロテイン 10g×2回 (朝・晩)
ビタミンC 1g×3回 (朝・昼・晩)
ビタミンB群(B5レベルで) 75 mg×3回 (朝・昼・晩)
24mg×3回
(ヘム鉄として3,600㎎)
(朝・昼・晩)
ビタミンE 200 IU × 3回 (朝・昼・晩)
亜鉛 15 ㎎ × 1回 (晩)
クロミウム 1000 μg×1回 (晩)

経過

治療1ヶ月後
母親の見る限り、だいぶ元気になってきたと感じている。

治療4ヶ月後
奇跡的に、良くなった!!普通に学校に通って、生活している。

主治医のコメント

矢崎智子

この患者さまの慢性疲労症候群の原因は、低血糖症と潜在性鉄欠乏をはじめとする栄養失調と考えられました。お若い患者さまなので、データも自覚症状も短期間で目覚しい改善が見られました。若いとは素晴らしいことですね。
低血糖症と鉄欠乏性貧血が合併すると、1+1=2と足し算式に症状が悪くなることはありません。1+1=100と感じるくらいに、ご本人の持つ自覚症状は悪化してしまいます。
低血糖症は、改善例3でも詳しく説明していますが、体質自体は遺伝子の問題ですから一生治ることはありません。しかし、栄養失調の改善、食事の改善により、症状を改善することは十分できるのです。

低血糖症について、詳しくはこちら→

そのため、貧血の改善とともに低血糖症の症状はパラレルに改善することが多いです。フェリチン値が50 ng/mlを超えてくると劇的に症状が改善する患者さまが多くいらっしゃいます。
そのため、食事療法が実践と栄養療法をしっかりしていただく必要があります。
つまり、強い低血糖症をお持ちの体質の方でも、主に貧血の治療をしっかりして、フェリチン値、ヘモグロビン値を理想値(基準値や正常値ではありません。)に近づけることで、慢性疲労をはじめとするさまざまな症状を劇的に改善させることが可能です。
もし、データ上目覚しい改善があるにもかかわらず、自覚症状がまったく変化がなかったり、少なかったりする場合では、他の原因が関係していると考えられます。
その場合、非常に多いのが、副腎などのホルモンの分泌異常です。その場合はさらに検査が必要になります。
この患者さまのように、中学生や高校生のお子さんが、学校から帰ると家でゴロゴロしている、急に成績が下がる、ひきこもり、注意力散漫で無気力など、一見貧血と関係なさそうな状態も、鉄欠乏が関係していることが多くあります。まず、お子さんのフェリチン値を病院で測定してもらうとよいでしょう。

日本医科大学付属病院小児科 山本正生教授も下記のように警告を鳴らしています。
「鉄欠乏性貧血がおこる過程は、図に示すように第Ⅰ期からⅡ期にかけて、まず体(肝臓、脾臓、骨髄など)に貯蔵されている鉄分(貯蔵鉄)から消耗し、さらに進んだ第Ⅱ期後半からⅢ期にかけてようやく組織鉄、血清鉄とともに赤血球が減少してくといった経過をたどる。
そのため、一般の病院でおこなわれる従来のヘモグロビン値を測定するだけの生化学検査では、第Ⅰ期からⅡ期にかけての潜在性鉄欠乏性貧欠乏症をまったく補足することができない。
つまり、ヘモグロビン値の測定では、予防医学や真の健康状態を把握するにはほとんど信頼がおけない。
患者は、倦怠感、無関心、学習障害、食欲不振などの精神・神経症状を自覚したら、潜在性鉄欠乏症を疑ってみる必要がある。
そのためには、ヘモグロビン値や血清鉄の値を示す赤血球プロトポルフィリン値などの指標だけでは不適で、貯蔵鉄タンパクを反映する血清フェリチン値の検査が最適。
近頃話題になっている、スポーツ選手に多い貧血でも、この血清フェリチン値が低くなることが明らかになっている。」

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